« May 2009 | Main | September 2009 »

July 24, 2009

月とミント

1234812445_114

いつまでも

溶けない

薄荷ドロップが

胸にあるから

泣きそうになる

6月3日の夜、祖母が旅立ちました。

90歳。

昨年の秋に、卒寿を迎えたところでした。

大正時代に生まれて、

満州で母を産み、財産すべてを置いて

命からがら引き揚げてきて

祖父と共に母、叔父、叔母を育てて。

幾度も転勤した祖父を支えて

50代で保険外交員の試験に合格したり

俳句やカラオケ、ゲートボールをたしなんだり。

80を過ぎてからパソコンや携帯メールを覚えた

元気なスーパーおばあちゃんを、

私たちは「はっちゃん」と呼んでいました。

いつもおしゃれで、すっと背が伸びた

可愛い花のようなひとでした。

Torukokikyou1

膝が少し、そして

心臓も少しだけ悪いという他には

とても元気で、活動的だった祖母が

身体の異変を感じたのは、4月のこと。

おなかが痛んで、あまり食欲がない。

そんなはじまりでした。

いくつかの病院を回り、検査を受けると

膵臓がんだということが分かり

共に暮らしている叔父たちは愕然としたのです。

1988年に亡くなった祖父も、同じ病だったから。

4月下旬に入院となり、

私たち孫にも伝えられたその病名に

みんな、空を仰ぐしかありませんでした。

大阪に住む祖母のもとに

私がお見舞いに行ったのは5月のこと。

若葉がきらめく大好きな季節なのに

重い重い雲が立ちこめている心を抱えて

母と新幹線で駆けつけた病室には

やつれた祖母の姿がありました。

苦しそうに眠る顔を見つめることしかできず

それでも、帰る間際にはお粥を少しあげることができて。

ゆっくり、一口ずつ匙を差し出す私に

「ちゃんと、ごはん食べてんの?」

そう尋ねた祖母は、以前のように

孫や子を気遣い、人のことばかり気にしている

優しい優しい祖母のままで、泣きそうになりました。

「うん。ちゃんと食べたよ。おばあちゃんも、食べてね。

もう少ししたら帰るけど、また来るからね。

こどもたちもみんな、応援してるから。またね」

そう言って手を握ると、うんうんと強く頷いて

力強く手を握り返してくれたはっちゃん。

「またね」と言ったのに、再会はかなうことなく

6月5日の夕刻から、通夜に駆けつけたのです。

棺に横たわる祖母は、おっとりとした顔で

私たちを迎えてくれました。

次の日、告別式に向かう車の中で

「はっちゃん、起きてるかもしれないから

 なんか食べるもの買っていってあげようか」

というハルの言葉に、胸が熱くなりました。

「眠っているみたいだね」と祖母の姿を見て

私が言った言葉を覚えていたのでしょう。

別れの儀式を済ませ、帰途に着いた私たち。

それを見守るかのように、空に浮かんだ月。

1234812445_198「お月さまの中から、はっちゃんがみんなに

 『がんばれー』って言ってるよ」

というハルの言葉に、みんなで黙って月を見て。

忘れられない水無月のできごと。

こどもたちの心にも、この月はきっと消えないでしょう。

胸の中の薄荷ドロップみたいなさみしい気持ちと共に。

いつまでも消えることのない甘い月 やさしい光を忘れないから

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« May 2009 | Main | September 2009 »