映画:『花とアリス』
*監督・脚本・音楽/岩井俊二
*出演/鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛、
平泉成、木村多江、大沢たかお、広末涼子
時間には、いろんな手触りがある。
井戸水みたいに、さらっとしている時間。
蔦みたいに、あちこちへ伸びてからまっている時間。
錆びついた時計のゼンマイを巻くような時間。
15歳の女の子がふたりいたら、きっとふたりの周りには、
とろんとしたハチミツみたいな時間が流れている。
なんとなく臆病で、本当の自分が出せない<花>と、
しっかりしすぎて、弱音を吐けない<アリス>。
道でいうなら、<花>の道はまっすぐで、
<アリス>の道は、くねくね道。
直線の最短コースを行こうとする<花>を、
寄り道させようと誘う<アリス>。
ふたりの周りには、間違いなく懐かしい甘さの
ハチミツみたいな時間が流れている。
その甘さは、恋する相手を溺れさせるようなもの。
蟻は、蜜の中で溺れて、這いあがれない。
気がつかないうちに、自分たちの中に
甘い蜜をためていた少女たちは、
相手がなぜ苦しそうなのか、分からない。
だから、自分たちで呼び寄せたはずの蟻が
動かなくなっても、また新しい道を歩いていく。
甘さを増した蜜をためながら、
バレエのステップで。



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